
スポーツ・アパレル公式ECサイトのデジタルマーケティング施策
クライアントワーク
役割:グロースマーケティングマネージャー
概要:スポーツ・アパレルブランドのオンラインプレゼンス強化とマーケティング戦略の実施
ケーススタディ
プロダクトオーナー(PO)として、外資系プレミアムペットフードブランドの日本向け公式ECサイトにおける売上改善プロジェクト担当しました。
売上30%減、新規顧客獲得数70%減という深刻な低迷期に、日本側で使える権限とリソースが限られる中でグロース戦略を策定・実行。
6ヶ月で月次売上10〜15%改善、新規顧客獲得数100%増、ロイヤルカスタマー数6%増(減少傾向から増加傾向への転換)を達成した実務ケーススタディです。
本プロジェクトは、外資系プレミアムペットフードブランドの日本国内向け公式D2C/ECサイトにおける売上回復および新規・ロイヤル顧客獲得の最大化を目的として行われました。
プロダクトオーナーとして、現状のビジネス課題・データ分析・ユーザー調査からグロース戦略の立案、施策の実行、グローバル開発チームとの折衝までを一気通貫で推進しました。
担当開始前の1年間、公式ECサイトの売上は継続的に低下していました。
新規顧客獲得数とブランドのロイヤル顧客数もともに右肩下がりで、深刻な事業低迷に陥っていました。
この時期には、「グローバル共通Webサイトの全面リニューアル」「価格改定(製品値上げ)」「コロナ禍特需の終息に伴う市場変化」といった外的・内的要因が同時期に重なっていました。
そのため、売上低下の主要因がどこにあるのかを特定することが非常に困難な状況でした。
その中で日本法人のEC責任者兼プロダクトオーナーとして参画し、データ基盤の整備、具体的なグロース施策の企画・検証、本社(HQ)や関係部門との利害調整・合意形成まで、実行フェーズ全体を主導しました。
複雑に絡み合った課題を分解するため、以下の6つの領域に整理し、ボトルネックの特定に努めました。
公式ECサイトの売上高がピーク時から30%減少。
さらに新規顧客獲得数は70%急減し、それに伴って優良顧客層であるロイヤルカスタマー数も右肩下がりに転じていました。
このままではLTV(顧客生涯価値)が長期的に毀損される重大なビジネス危機でした。
グローバル主導で共通システムへリニューアルした際、購買決定の後押しとなっていた「顧客レビューコンテンツ」がサイト全体から削除されるトラブルが発生していました。
また、主要な商品カテゴリーページの約80%が非表示になり、新規ユーザーが欲しい商品にたどり着くための検索・ナビゲーション導線が著しく劣化していました。
さらに、製品詳細ページの商品説明文や画像も不足していました。
同一ブランド内で複数のWebサイト(コーポレートサイト、プロモーション用特設サイトなど)が並行運用されていたため、検索エンジンの評価が分散。
最も基本的な指名検索(ブランド名での検索)において、公式ECサイトが検索順位2位にとどまっていました。
また、リニューアル時にカテゴリーページが大幅に削減されたことで、自然検索の評価が低下し、ロングテールキーワード経由の流入数が著しく減少していました。
広告の配信設計がSEM(検索連動型広告)の特定キーワードに偏っており、潜在顧客や休眠顧客へのアプローチが不足していました。
さらに、新規顧客の獲得にターゲティングが偏り、既存顧客(リピーター)の購入意欲を高めるリマーケティング設計が不十分でした。
その結果、CPA(獲得単価)の高騰とROAS(広告費用対効果)の悪化を招いていました。
Google Analytics(GA)のトラッキング設定に重大なバグが複数残っており、正確な流入経路やCVR(成約率)が計測されていませんでした。
マーケティング活動別の費用対効果も十分に可視化されておらず、どのマーケティングチャネルが売上に貢献しているのかを定量的に検証できない状態でした。
公式ECサイトのユーザーがなぜカートから離脱しているのか、その心理的・行動的な理由をデータから把握できていませんでした。
競合ECモールや店頭など、他販路との価格差・流通状況の違いがどれだけ影響しているのかについても、確証が得られていませんでした。
本プロジェクトを推進するにあたり、最も大きな障壁となったのが「グローバル本社のシステム管理権限」でした。
公式ECサイトは欧州のグローバル本社開発部門で一括管理されており、軽微なバナーの更新やテキストの変更、バグ修正であっても、日本側で直接コードを書き換えることは許可されていませんでした。
仕様変更や改修を本社に依頼しても、コミュニケーションロスや承認フローの長さから、適用までに早くても1ヶ月以上の長いリードタイムを要する状況でした。
また、日本法人側には専任のフロントエンドエンジニアやデザイナーなどの開発リソースが常駐しておらず、限られたメンバーで施策を回す必要がありました。
このため、本社側のシステム開発を待たずに、日本側だけでスピーディーに実行できる代替アプローチ(サードパーティーツールの活用や手動でのデータ整備など)を柔軟に模索する必要がありました。
限られた制約とリソースの中で最大の成果を早期に創出するため、短期で即時反映できる施策と、中長期で本社の力を借りて構造的に解決する施策を並行して推進する「二段構えのグロース戦略」を策定しました。
データ基盤を早急に整備し、大規模なユーザー調査によって離脱要因を迅速に特定。
本社の開発承認フローに依存せず、日本側で即時に導入・運用できるサードパーティーツールや手動の代替オペレーションを活用して、UX/UI上の摩擦を解消する。
また、季節性の高いキャンペーン施策を2ヶ月に1回のペースで実行し、短期的な売上回復と新規獲得数の改善につなげる。
指名検索における公式ECの優位性を回復するため、SEOの基礎最適化を進める。
あわせて、削除されたカテゴリーページの復旧に向け、SEO価値の高いページから優先順位を付け、本社へ根拠データを提示しながらページ復旧・改修を推進する。
広告ロジックはCPA重視から、機械学習を用いた自動入札によるROAS重視へ移行し、トラッキングタグの根本修正をグローバルのデータ部門と直接連携して実施する。
策定した戦略に基づき、6つのカテゴリーに分けて以下の具体的な施策を実行しました。
Google Analytics(GA)およびGoogle Tag Manager(GTM)のトラッキングタグの設定ミスを洗い出して修正し、コンバージョンデータと流入元データのクレンジングを完了。
さらに、GA、広告データ、ECプラットフォームの売上データをAPI経由でGoogleスプレッドシートに統合する自動レポートダッシュボードを自作しました。
これにより、各キャンペーンや施策のパフォーマンスとKPI変化を週次で素早く可視化し、次の改善アクションにつなげる体制を作りました。
ECサイトでの購入者および未購入で離脱したユーザーに包括的なWebアンケート調査を実施し、約7,000件のフィードバックを収集しました。
テキストマイニングとデータ分析を通じて、「他社のECモールやドラッグストアの店頭のほうが、公式ECよりも同一製品が30〜40%安く売られている」という不満が、カート離脱の決定的な要因であることを立証。
この分析データをレポート化し、日本側のブランドマネージャーや価格決定権を持つ事業部門へ提示しました。
他部署と協力してプロモーションや値引き施策を実行するための、重要な交渉材料として活用しました。
新規ユーザーの離脱を防ぐため、トップページおよび商品カテゴリーページのUI/UXを再設計し、目的の製品に迷わずたどり着ける導線に改善しました。
本社の開発サイクルを待たずに日本側でバナーや紹介コンテンツを即日変更できるよう、外部 of ページ編集システム(サードパーティーツール)を導入して運用の高速化を実現。
また、リニューアルで失われたレビューを補うため、過去データを整理し、手動で約1,000件の優良レビューを製品詳細ページに再配置しました。
さらに、製品の使用シーンや給餌方法が直感的に伝わる動画を特定の主力製品詳細ページに埋め込み、商品理解と購入意欲を高めました。
各製品ページやカテゴリーページのメタタイトル、メタディスクリプション、H見出しタグを含むオンページSEOを徹底的に最適化。
指名検索における自社ECサイトの検索エンジン評価を回復させ、検索結果2位から1位へと復旧させました。
さらに、リニューアル時に削除されたカテゴリーページのSEO上の価値を明確化し、本社開発チームへページデータの追加・復旧を粘り強く依頼。
重要なカテゴリーページを順次復旧させ、ロングテール検索からの自然流入増加を実現しました。
これまでの指名検索(SEM)のみに頼った限定的な広告設計を見直し、新規見込み顧客への認知拡大と、過去の訪問者・購入者への段階的なリターゲティングを組み合わせた包括的な広告キャンペーンを構築しました。
「Googleディスカバリー広告」や「Yahoo!ディスプレイアド(YDA)」などの配信面をテスト導入。
また、本社のデータチームと連携してトラッキングタグの計測精度を高めたことで、Google広告の自動入札アルゴリズムを「獲得数(CPA)重視」から「費用対効果(ROAS)重視」に移行させ、広告効率を最大化しました。
ECサイトへの訪問者が初回購入に至る心理的な障壁を下げるため、「新規会員登録で即時使える500円OFFクーポン」の配布施策を企画。
さらに、顧客が一定金額以上のまとめ買いを行うインセンティブとして限定ノベルティキャンペーンを定期的に実施しました。
また、購入後に次回使えるクーポンを提供する「レビュー投稿促進キャンペーン」などを設計し、リピート購入を喚起。
これらの各種キャンペーンを約2ヶ月に1回の頻度で計画・実行し、売上の底上げを図りました。
これらの短期・中長期の施策を6ヶ月間継続して実行した結果、以下の定量的な成果を収めることができました。
このプロジェクトを通じて、プロダクトオーナーとして以下の領域で具体的な成果と価値を示すことができました。
このプロジェクトでは、EC売上の低迷、新規顧客獲得数の減少、ロイヤルカスタマーの減少など、複数の課題が同時に発生していました。
一方で、担当範囲の裁量は大きく、データ分析、UX/UI改善、SEO、広告運用、キャンペーン企画、顧客アンケート分析、社内調整まで、幅広い領域を自ら主導できる環境でもありました。
そのため、限られたリソースの中でも、これまで培ってきたデジタルマーケティングの知見やスキルセット、データ分析力、AIや自動化を活用した業務効率化の経験を活かし、短期間で非常に多くの改善施策を実行しました。
結果として、月次売上の改善、新規顧客獲得数の増加、ロイヤルカスタマー数の回復につなげることができた点は、このプロジェクトにおける大きな成果だったと考えています。
一方で、このプロジェクトを通じて強く学んだことは、施策の実行スピードだけでなく、最初に本質的な課題を見極めることの重要性です。
プロジェクト後半で実施した約7,000件のユーザーアンケートにより、売上低迷の背景には、単なるWebサイトの使い勝手や広告効率だけでなく、「同じ製品を他の販売チャネルでより安く購入できる」という価格面の課題が大きく影響していることが分かりました。
このインサイトは、Google Analyticsなどの定量データだけでは見えにくいものであり、実際の顧客の声を分析することで初めて明確になった課題でした。
振り返ると、より早い段階で定量データと定性データを組み合わせた分析を行っていれば、さらに優先順位の高い施策に早く集中できた可能性があります。
このプロジェクトでは、自由度の高いデータ分析ができる環境があり、またデータに強いメンバーや専門性の高い関係者と協働する機会もありました。
その経験を通じて、デジタルマーケティングにおいて、データサイエンスやより高度な分析手法を取り入れる重要性を強く感じました。
今後は、単に多くの施策を高速に実行するだけでなく、最初にデータをもとに課題を構造化し、原因を冷静に特定したうえで、最もインパクトの大きい施策から優先的に実行していきたいと考えています。
デジタルマーケティング、データ分析、AIによる業務効率化を組み合わせることで、限られたリソースでも、より再現性高くビジネスインパクトを生み出せるマーケティングを実践していきたいです。