事例:外資系スポーツアパレル公式ECのデジタルグロース戦略と改善施策
ケーススタディ
外資系スポーツアパレルブランドの日本向け公式ECにおいて、デジタルマーケティングチームのリーダーとして、広告・SEO・アプリ・CRM・店舗接点・データ基盤を横断したグロース施策を推進しました。
SEMやメールマーケティングに依存した刈り取り型の集客から、認知・検索・比較検討・購買・リピートまでをつなぐフルファネル型のマーケティングへ転換。
インプレッション約2倍、セッション約20%増、SEO流入約25%増を実現し、結果としてEC売上約50%増にも貢献したプロジェクトです。
1. プロジェクト概要
本プロジェクトでは、日本国内向け公式EC(D2C)サイトの売上成長、トラフィック拡大、新規顧客獲得を目的に、デジタルマーケティング全体の戦略設計から実行、チーム運用の改善までを担当しました。
担当領域
広告(Paid Media)最適化、オンページSEOと制作ワークフロー刷新、公式モバイルアプリのUX改善、アフィリエイト広告およびメディア連携、CRM(ロイヤリティプログラムの日本市場ローカライズ)、ローカル店舗集客(Google Business Profile最適化)、KPIダッシュボード構築とMicrosoft Teamsによる組織コミュニケーション改善の7領域を横断的にリードしました。
主要成果
フルファネル型のデジタルマーケティング施策を通じて、インプレッションは2億から4億規模へ拡大し、約2倍に増加。
サイトセッションも約20%増加し、ブランド認知と公式ECへの流入基盤を大きく改善しました。
その結果、2020年対2022年でEC売上約50%増にも貢献。
さらに、アプリUX改善によりアプリ経由売上は約100%増加し、会員獲得や新規顧客売上の改善にもつながりました。
また、KPIダッシュボードの構築とMicrosoft Teamsの導入により、データに基づいて施策を振り返り、チームで意思決定できる運用基盤も整備しました。
2. 直面していたビジネス課題
参画当時、ブランドは持続的な成長を阻む複数のビジネス・組織課題を抱えていました。
1. 特定チャネルとディスカウントへの過度な依存
売上と集客がSEM(検索連動型広告)とメールマーケティングに偏っており、頻繁なディスカウントキャンペーンを実施しなければ売上を維持しにくい状態でした。
2. 新規顧客獲得と会員登録率の伸び悩み
売上の大部分が一部のロイヤルユーザーに依存しており、新規顧客獲得のチャネル設計や、新規流入から会員登録へつなげる導線に改善余地がありました。
3. カテゴリーページのSEOコンテンツ不足
主要カテゴリーページのコンテンツが不足していたため、指名検索以外のロングテールキーワードで順位を取り切れず、自然検索(SEO)経由の流入が伸び悩んでいました。
4. アプリUXのエラー頻発と開発予算の偏重
公式モバイルアプリでは動作バグやUX上の不具合が多発していた一方で、外部開発ベンダー主導の新機能開発に予算が偏り、ユーザー体験の根本改善が後回しになっていました。
5. ローカル検索と店舗接点の改善余地
Google Business Profile(GBP)をはじめとする店舗検索導線の情報発信や最適化が十分ではなく、オンラインと実店舗をつなぐ集客シナジーを活かし切れていませんでした。
6. アナログなデータ集計とブラックボックス化したチーム運営
週次のPowerPointレポート作成など手作業の負担が大きく、意思決定も個人チャットや定例会議に依存していました。
その結果、情報共有の透明性と意思決定のスピードに課題がありました。
3. デジタルマーケティング成長戦略
ブランド価値を守りながら再現性のある売上成長を実現するため、以下の3つを成長戦略の柱に据えました。
【戦略の3つの柱】
- フルファネル型マーケティングへの転換:ディスカウントと指名SEM広告に依存した刈り取り型の集客から、認知・興味関心・購買・リピートまでを一貫して設計するアプローチへ移行し、新規顧客とインプレッションの母数を拡大する。
- グローバル資産の日本市場向けローカライズ:グローバル本社が保有するクリエイティブアセットやロイヤリティプログラムを日本市場に合わせて最適化し、予算効率を高めながらブランド価値を訴求する。
- チャネル横断の統合改善とデータ・組織基盤の刷新:広告・SEO・アプリ・CRM・店舗接点を個別施策として扱うのではなく、一貫したユーザー体験として連携させる。あわせて、リアルタイムなデータ可視化とオープンな情報共有により、意思決定の速度と質を高める。
4. 実行した具体的なアクション
上記の戦略を実行に移すため、以下の7つのアクションを同時並行で推進しました。
4.1 広告運用の最適化
SEM広告に偏っていた予算配分を見直し、ディスプレイ広告や動画広告にも再配分しました。
グローバル本社のキャンペーンクリエイティブを活用してインプレッションとブランド認知を拡大し、Google Performance Max(P-Max)キャンペーンを新規獲得とプロモーション強化にテスト導入。
ピーク月の売上最大化につなげました。
さらに、広告代理店を日本市場での運用力が高いベンダーへ変更し、インハウスの専門リソースとして広告担当者も採用しました。
4.2 SEOワークフローの刷新
本社承認、翻訳、公開までに時間がかかっていたコンテンツ制作プロセスを見直し、日本チーム側でカテゴリーページを直接編集できるワークフローへ刷新しました。
ブランディングチームとの確認体制も整え、主要カテゴリーページのテキスト、メタ情報、タグ構成をSEO観点で最適化しました。
4.3 アプリUXの改善
外部開発ベンダー主導の機能開発ロードマップを見直し、ユーザー評価低迷の要因となっていたエラーやバグの修正を最優先に切り替えました。
製品ナビゲーションの階層を整理して使いやすさを改善し、購入意欲を高めるポイント倍増施策をアプリ限定イベントとして企画・実施しました。
4.4 アフィリエイト広告とメディア連携
商品紹介やレビューなどのユーザー生成コンテンツ(UGC)不足を補うため、アフィリエイトマーケティングを強化しました。
高品質で信頼性の高い記事を制作している15の有力アフィリエイト・ブログメディアを厳選し、特別報酬単価、限定クーポン、キャンペーン情報の早期共有などを実施。
有望メディアとは固定枠広告の直接契約も結び、比較・検討段階のユーザー接点を広く確保しました。
4.5 ロイヤリティプログラムの日本市場向けローカライズ
グローバル本社が展開するロイヤリティプログラムの日本導入にあたり、メンバーシップ特典やポイント還元設計を日本市場に合わせてローカライズしました。
担当メンバーが主導した詳細設計をチームリーダーとして支援・推進し、新規登録後すぐに利用できる10%OFFクーポンを広告施策と連動。
新規会員獲得の起点として活用しました。
4.6 ローカル検索と店舗接点の改善
オンラインと実店舗の相互送客を強化するため、Google Business Profile(GBP)を最適化しました。
店舗情報、営業時間、ビジュアルコンテンツを常に最新の状態に保ち、ローカル検索での視認性を向上。
店舗集客とオンライン経由の店舗認知拡大につなげました。
4.7 KPIダッシュボード構築とチームコミュニケーション改善
手作業で行われていたレポート業務を自動化するため、過去24ヶ月分の広告・SEO・EC・アプリデータを統合し、リアルタイムに参照できるKPIダッシュボードを構築しました。
週次スライド作成の負担を大幅に削減し、データに基づいて次の施策を決める月次分析会を定着させました。
さらに、チーム内のコミュニケーションツールとしてMicrosoft Teamsを導入。
意思決定や施策共有を個人チャットや会議中心の運用から、オープンなチャンネル運用へ移行し、チーム運営の透明性を高めました。
5. プロジェクトの成果
本プロジェクトでは、短期的な売上改善だけでなく、ブランド接点の拡大、自然検索流入の強化、アプリ・店舗・CRMを含む顧客接点の改善を重視しました。
特に、SEMやメールマーケティングに依存した刈り取り型の集客から、認知・検索・比較検討・購買・リピートまでをつなぐフルファネル型のデジタルマーケティングへ移行したことで、以下の成果につながりました。
1. 認知接点とインプレッションの拡大
広告運用の見直し、動画・ディスプレイ広告への投資拡大、グローバル本社のクリエイティブ活用、ローカル検索接点の改善により、ブランドとユーザーの接点を大きく拡大しました。
- インプレッション数:2億から4億規模へ拡大し、約2倍に増加
- Google Business Profile インプレッション数:約60%増加
- Google Business Profile エンゲージメント数:約100%増加
2. サイト流入とSEOパフォーマンスの改善
カテゴリーページのSEOコンテンツ改善、メタ情報の最適化、制作ワークフローの刷新により、自然検索からの流入を強化しました。
本社・翻訳会社・ブランディングチームをまたぐ従来の制作プロセスを見直し、日本チーム側でよりスピーディーに改善できる体制を整えたことで、SEO施策の実行スピードと改善精度を高めました。
- セッション数:約20%増加
- 自然検索流入(SEO):約25%増加
- 平均検索順位:35位から20位へ改善
3. アプリ・CRM・新規顧客接点の改善
公式モバイルアプリでは、新機能開発よりもユーザー体験の改善を優先し、エラー修正、製品ナビゲーション改善、ポイント施策を推進しました。
また、ロイヤリティプログラムの日本市場向けローカライズを支援し、新規会員獲得とCRM強化にも貢献しました。
- アプリ経由売上:約100%増加
- 会員数:約25%増加
- 新規顧客経由の売上:約7%増加
4. 売上成長への貢献
上記のような認知接点、サイト流入、アプリ体験、CRM、店舗接点の改善を複合的に推進した結果、公式EC全体の売上成長にも貢献しました。
- 公式EC売上:2020年対2022年比で約50%増加に貢献
- SEMピーク月売上:繁忙期の広告運用改善により、前年同月比で約30%増加
この成果は、単一チャネルの改善ではなく、広告・SEO・アプリ・CRM・ローカル検索・データ基盤を横断して改善した結果です。
売上だけでなく、ブランド接点と流入基盤を広げたことで、継続的なEC成長につながるマーケティング基盤を整えることができました。
6. 本プロジェクトのまとめ
本プロジェクトは、個別のWebマーケティング施策だけでなく、ブランド資産、顧客接点、データ基盤、チーム運営を統合して成長につなげたデジタルグロースの事例です。
デジタルマーケティングリーダーとして、以下の価値を発揮しました。
- グローバルとローカルの橋渡し:グローバル本社が持つブランドアセットやプログラムを理解し、日本市場の商習慣や顧客心理に合わせてローカライズ・推進する調整力。
- チャネル横断のフルファネル設計:広告、SEO、アプリ、アフィリエイト、GBP、CRMなど分断されがちな施策を統合し、主要指標を同時に伸ばすグロース設計力。
- データ駆動型の意思決定とオープンな組織づくり:手作業のレポート業務を削減し、KPIダッシュボードとTeamsを活用して、チーム全員がデータに基づいて改善を進められる運用基盤を構築する力。


